社会思想

トゥーキュディデースとホッブズ

トゥーキュディデースとホッブズ
  • 『トゥーキュディデースとホッブズ: 真のリアリズムを求めて』
  • 木庭顕/編集・翻訳
  • みすず書房
  • 2022/12/05
  • ISBN: 9784622095590

鮮やかな論証で先入見を覆す最新最良の論集。HobbesのThoukydides受容を論じる気鋭の2篇(Hoekstra, Iori)を基軸に、Hobbes研究最先端(Malcolm, Hoekstra)、Thoukydides研究(De Romillyの古典的傑作、編訳者書き下ろし)を緊密に編む。同時代の政治状況においてThoukydidesを真剣に読んだHobbesを、現代の私たちが真剣に読む。真のリアリズムを求めて。

-- トゥーキュディデースとホッブズ 木庭顕(編集 | 翻訳) - みすず書房 | 版元ドットコム

アディクションと金融資本主義の精神

アディクションと金融資本主義の精神
  • 『アディクションと金融資本主義の精神』
  • 鈴木直/著
  • みすず書房
  • 2023/03/20
  • ISBN: 9784622096047

中毒、依存、嗜癖(しへき)などと訳される「アディクション」。スマホ、ギャンブル、ゲーム、飲酒、買い物……その対象は多岐にわたり、今日のネット社会ほどアクセスが容易になったことは人類史上かつてない。短期報酬を追い求めるアディクション化した金融経済は、実体経済を呑み込みながら、資本主義のカジノ化を推進している。
拡大するアディクションと、不安定化する金融資本主義。著者はそこに、人間の認知機能にそなわった特異な能力と脆弱性が深く関与していることを突き止める。そもそも近代化と資本主義の内に、アディクションを生み出す認知的なメカニズムが潜んでいるのだ。本書では、カント、ヘーゲル、ゲーテ、マルクスらの近代思想をふり返りながら、両者の関連をたどっていく。
しかも認知機能には限界がなく、それゆえ現代資本主義は、土地も人口も資源も尽きることがない無限の仮想空間(メタバース)に新たな収益源を求めつつある。
社会の断片化によって孤立した個人がアディクション的行動に走り、それが資本主義をさらに不安定化させる。拠り所を失った個人は、やがて独裁者やカルト集団にも容易に隷従することになるだろう。
アディクションを抑制しながら、民主主義が資本主義をコントロールする社会をつくり上げていくことは可能なのか。広い視野と多様な領域から、共に解決を求める場を開く。

-- アディクションと金融資本主義の精神 鈴木直(著/文) - みすず書房 | 版元ドットコム

公共哲学入門

公共哲学入門
  • 『公共哲学入門: 自由と複数性のある社会のために』
  • 齋藤純一/著 谷澤正嗣/著
  • NHK出版
  • 2023/03/25
  • ISBN: 9784140912782

わかりあえない他者と生きる思考法
多様性よりも「複数性」を、そして何よりも人間の「平等な自由」を実現するために――。カントに始まり、功利主義、ロールズ、リバタリアニズムなど定番の要点をしっかり押さえたうえで、デモクラシーの価値を根底から問い直す。「今だけ・自分だけ」の発想を乗り越えて、政治的意思の違いを互いに解消することなく、共に生きていく視点を身につける「新しい教科書」!

-- 公共哲学入門 齋藤 純一(著/文) - NHK出版 | 版元ドットコム

アーレントと革命の哲学

アーレントと革命の哲学
  • 『アーレントと革命の哲学: 『革命論』を読む』
  • 森一郎/著
  • みすず書房
  • 2022/12/20
  • ISBN: 9784622095545

暴力によるのではない仕方で、新しく始めることはいかにして可能か。…革命の成否のカギは暴力にあるとする固定観念を疑問に付し、政治的なものに固有な「権力(パワー)」、つまり言論と行為にみなぎる人間力に革命の本質を見出そうとするのが、アーレントの『革命論』なのである。同じく人類古来の言い伝えを借りて表現すれば、こうなろう――「はじめに言論(ロゴス)があった」と。新しい始まりとしての革命を構想する哲学は、暴力ならぬ言論の力を、つまりその意味での人間力を信ずるものでなければならない〉
アーレント『革命論』をどう読むか。本書は『革命論』の訳者による、詳細なテクスト読解である。「革命とは何か」についてのアーレントの基本的考え方、フランス革命からロシア革命にいたる系譜だけでなく、アメリカ独立革命にアーレントが重点を置いた意味、さらに、始まりとは、約束とは、「どんな革命にも驚くべき規則性で現われてくる新しい国家形態」である評議会制とは、そして憲法とはいかなるものか。
このように『革命論』を読み解きながら、著者はわれわれを取り巻く戦後日本の姿、とくに日本国憲法のあり方をめぐって考察を進めてゆく。
一冊の本から何を知り、理解し、考えることができるか。厳密かつ自由なレッスンの書である。

-- アーレントと革命の哲学 森一郎(著/文) - みすず書房 | 版元ドットコム

価値論

価値論 人類学からの総合的視座の構築
  • 『価値論: 人類学からの総合的視座の構築』
  • デヴィッド・グレーバー/著 藤倉達郎/翻訳
  • 以文社
  • 2022/12/02
  • ISBN: 9784753103713

『負債論』や『ブルシット・ジョブ』そして遺作となった『万物の黎明(The dawn of everything)』(D・ウェングロウとの共著)などの著作で、つねに世の「常識」とされるものの根幹にある思考パターンの転覆を試みてきたデヴィッド・グレーバーが、自身の博士論文の出版を後回しにしてまで取り組んだ「最初の主著」であり、袋小路に入り込んでいる社会理論がそこから抜け出すために仕掛けられた「価値の総合理論」。
さまざまな社会の価値体系を記述してきた人類学は、ポストモダン(思想)と新自由主義が席巻するなか、批判なき相対主義という罠に嵌っている。その人類学を救い出そうとするグレーバーの当初の目論見は思わぬ壮大な思考実験、つまり新たな価値理論の構築へと進む──
「意味の体系(この世界を理解したい)」と「欲望の理論(このような状況を実現したい)」を、そしてカール・マルクスとマルセル・モースを架橋する、のちに複数の怪物的な著作として結実したグレーバー思想の源流。

-- 価値論 デヴィッド・グレーバー(著/文) - 以文社 | 版元ドットコム

公衆衛生の倫理学

公衆衛生の倫理学
  • 『公衆衛生の倫理学: 国家は健康にどこまで介入すべきか』
  • 玉手慎太郎/著
  • 筑摩書房
  • 2022/12/16
  • ISBN: 9784480017628

健康をめぐる社会のしくみは、人々の自由をどう変えるのか。セン、ロールズ、ヌスバウムなどの議論を手掛かりに、現代社会に広がる倫理的な難問をじっくり考える。

-- 公衆衛生の倫理学 玉手 慎太郎(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム

変革する文体

変革する文体 もう一つの明治文学史
  • 『変革する文体: もう一つの明治文学史』
  • 木村洋/著
  • 名古屋大学出版会
  • 2022/12/26
  • ISBN: 9784815811082

新たな文体は新たな社会をつくる
小説中心主義を脱し、政論・史論から翻訳・哲学まで、徳富蘇峰を起点にして近代の「文」の歩みを辿りなおし、新興の洋文脈と在来の和文脈・漢文脈の交錯から、それまでにない人間・社会像や討議空間が形づくられる道程をつぶさに描いた意欲作。

-- 変革する文体 木村 洋(著) - 名古屋大学出版会 | 版元ドットコム

デューイ著作集2 哲学2 論理学理論の研究, ほか

デューイ著作集2 哲学2 論理学理論の研究, ほか
  • 『デューイ著作集2 哲学2 論理学理論の研究, ほか: デモクラシー/プラグマティズム論文集』
  • ジョンデューイ/著 古屋恵太/著 松下良平/著
  • 東京大学出版会
  • 2023/01/06
  • ISBN: 9784130142021

デューイが哲学者としての自己像を確立するに至る、初期から中期の論考を精選。多数派支配ではないデモクラシー、実用的な都合次第の真理の探究ではないプラグマティズムの特徴を提示し、ポスト・トゥルースの時代を生きる人々にアクチュアルな示唆を与える。

-- デューイ著作集2 哲学2 論理学理論の研究, ほか ジョン デューイ(著/文) - 東京大学出版会 | 版元ドットコム

真理の語り手 重田 園江(著/文) - 白水社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784560094754

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、戦争が始まった。戦争が始まってから、大量の情報が流れてくる。プーチンの思惑やゼレンスキーの戦略、東西の軍事的分析がその中心にある。

戦争を受けて書き下ろされた本書が注目するのは、『全体主義の起源』を書き、ナチスドイツとソ連の体制の〈嘘〉を暴いたハンナ・アーレントである。というのも、ブチャの虐殺はじめ、多くの「事実」が〈嘘〉によって歪められているからだ。こうした事態はいまに始まったことではない。むしろ全体主義体制の本性といえるかもしれない。欺瞞や虚偽は心地よい。圧制下の人々は不意打ちしてくる飾りのない真実より、心地よい嘘を好むのだ。

そして、この戦争をアーレントと同じ眼差しで眺めているのがウクライナの映画監督セルゲイ・ロズニツァだ。彼による『バビ・ヤール』が本書の拠り所になっている。キーウ近郊のバビ・ヤールは「銃殺によるホロコースト」が行われた痛ましい場所だ。

心地よい虚偽にいかに抗していくのか? 本書では、アーレント=ロズニツァに寄り添いつつ、「真理の語り手」の意味を考える。

重田園江(著)。

「社会正義」はいつも正しい ヘレン・プラックローズ(著/文) - 早川書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152101877

フェミニズム、クィア理論、批判的人種理論――〈社会正義〉の御旗の下、急激な変異と暴走が続くポストモダニズム。「第二のソーカル事件」でその杜撰な実態を暴き、全米に論争を巻き起こした著者コンビが、現代社会を破壊し続ける〈理論〉の正体を解明する!

ヘレン・プラックローズ/ジェームズ・リンゼイ(著)、山形浩生/森本正史(翻訳)。

新しい階級闘争 マイケル・リンド(著/文) - 東洋経済新報社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784492444719

グローバル化の問題点は「新しい階級闘争」を生み出した。新自由主義改革のもたらした経済格差の拡大、政治的な国民の分断、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーの暴走である。各国でグローバル企業や投資家(オーバークラス)と庶民層の間で政治的影響力の差が生じてしまったことがその要因だ。著者は現代の「新しい階級闘争」の解決を考えるために、マルクスが問題にしたような資本家対労働者の「古い階級闘争」がどのように解決・穏健化に向かったかを探り、戦争が中間団体の調整の政治「民主的多元主義」を各国が編み出し、階級を越える国民の妥協と結束をもたらしたと指摘。戦後の欧米の福祉国家はすべて戦争の名残だ。しかし1970年代頃から「オーバークラス」が「上からの反革命」を起こして、庶民を裏切るに至ったと分析する。「新しい階級闘争」の解決のためには、同様に中間団体の再生やその間の調整の政治の復権、「民主的多元主義」が必要だと説く。そのためにはグローバル化に一定の歯止めをかけるしかなく、無理ならば自由民主主義も滅びることになると論じる

マイケル・リンド(著)、中野剛志(解説)、施光恒(翻訳・監修)、寺下滝郎(翻訳)。

思想史講義【明治篇Ⅰ】 山口 輝臣(編集) - 筑摩書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480075147

文明開化の実態はいかなるものだったのか。富国強兵は本当に言われていたのか。最新の研究成果により明治前半の諸思想を徹底検証。従来の明治時代像を刷新する。

四巻シリーズによる近代日本思想史の起点となる本書では、明治維新をめぐるさまざまな思想を考察する。文明開化は単なる「西洋化」だったのか。富国強兵は本当に維新当初からスローガンだったのか。最新の実証的研究に基づく16のテーマと8本のコラムにより、諸思想を掘り下げて検討。多彩な論点で歴史を行きつ戻りつたどることによって、思想史の力を引き出し、従来の単線的な明治維新像を刷新する。過去を考える意味とおもしろさがわかる、これまでにない明治維新思想史入門。

山口輝臣/福家崇洋(編集)。